ロボットが変える戦争

P. W. シンガー(ブルッキングス研究所)
201010

日経サイエンス 2010年10月号

9ページ
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 「戦争」という言葉から,何を思い浮かべるだろうか。死の恐怖,血と硝煙,飢えとの戦い,望郷の思い……。そんなものを思い浮かべる人が多いだろう。
 だが今や,戦争の様相は一変している。朝起きて,車で出勤し,コンピューターを立ち上げ,システムを操作して地球の裏側にいる反政府勢力と戦う。米軍では,そんな兵士が増えつつある。交戦中に命を落とすより,交戦を終えて帰宅する時に交通事故に遭う危険の方が大きいのだ。
 ロボットは,2003年のイラク侵攻時には米陸軍に1台もなかったが,今や1万2千台を超えている。空軍や海軍でも似たようなものだ。今や兵士は米国を一歩も出ずに,パキスタンを空爆している。
 兵士たちの命を危険にさらすことなく敵を攻撃できるのは,見方によっては成功と言えるかもしれない。だがその一方で,様々な問題を提起している。戦争の敷居が低くなり,マスコミの報道もなく,国民が知らないうちに戦争が始まってしまう。攻撃される側の怒りは激しく,誤爆などの間違いが起きた時,誰がどこまで責任を取るのかも明確でない。
 機械に何を,どこまで任せてよいのか。ロボット戦争が抱える政治的,倫理的,法的な問題にどう向き合えばいいのか。それは今やペンタゴンだけでなく,国民一人ひとりに投げかけられた問いなのだ。