海を漂うプラスチック

J. アッカーマン(科学ライター)
201011

日経サイエンス 2010年11月号

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 毎年何百万トンも捨てられているプラスチックが環境中に数百年とどまり続けることを,いまは小学生でも知っている。そして,そうしたプラごみが海で引き起こしている恐ろしい事例も,よく知られている。ナイロンの網に絡まったオットセイ,缶を束ねるポリエチレンのリングを呑み込んで苦しんでいるラッコ,レジ袋やおもちゃで腸が詰まったウミガメなどだ。この写真はマサチューセッツ州グロスター近くの入江でたった1時間の間に集めたプラスチック断片の数々で,あまり知られていない別の懸念をうかがわせる。ごく小さなプラスチック断片が全世界の海に蓄積しつつあり,それらが海洋生物や人間の健康を害する恐れがあるのだ。
 マイクロプラスチック粒子が小さな無脊椎動物の摂餌付属肢や消化管の機能を損なうかもしれない。また,プラスチック粒子を食べると,製造時に添加されていた化学物質が健康を脅かす恐れがある。内分泌撹乱物質のビスフェノールAなどだ。さらに,海水中を浮遊するプラスチック断片はDDTやダイオキシン, PCB(ポリ塩化ビフェニール)といった有害物質を引き寄せて吸収するスポンジとして働き,これらの濃度を周囲の海水に比べて100〜100万倍に濃縮する。こうしたマイクロプラスチック粒子を食べた生物は濃縮汚染物質にさらされ,その生物を捕食した生き物も同様だ。