タスマニアデビルの伝染するがん

M. E. ジョーンズ(豪タスマニア大学)
H. マッカラム(豪グリフィス大学)
201109

日経サイエンス 2011年9月号

7ページ
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 怖そうな名前が付いているが,なかなかチャーミングな顔つきのタスマニアデビル。カンガルーと同様,お腹の袋で子どもを育てる有袋類だ。かつてオーストラリア大陸にも生息していたが,今ではその名前の通り,同大陸の南に位置するタスマニア島にしかいない。しかも,ここ20年で頭数が激減し,豪政府は絶滅危惧種に指定している。原因は,顔面や口の中にできる伝染性のがん。タスマニアデビルは激しくかみ合う習性があり,腫瘍細胞が咬み傷に付着してそこに根付く。「そうした外来の腫瘍細胞は,免疫によって排除されてしまうのではないか?」と思われるかもしれないが,免疫がうまく働かないところにタスマニアデビルの悲劇がある。