さよならテバトロン

T. フォルジャー(サイエンスライター)
201111

日経サイエンス 2011年11月号

7ページ
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素粒子物理学の実験研究の世界で30年近くの長きにわたって君臨した米国の巨大加速器テバトロンが9月末で運転を終える。テバトロンは素粒子論の基本的枠組み「標準モデル」の完全実証を目論んで建設された。最初のターゲットは,小林・益川理論で予言されたクォークのうち,最後まで未発見だったトップクォーク。「トップ」発見一番乗りを目指して最初は西ドイツ(当時)の新鋭加速器PETRAが挑み,次は日本のトリスタン,さらには米国のSLC,欧州合同原子核研究機構(CERN)のLEPと探索に乗り出すも成し遂げられず,テバトロンが発見の栄誉を手にした。
次なるターゲットは標準モデルで最後まで残った未発見粒子ヒッグスだった。万物に質量を与えるヒッグス粒子もテバトロンが見つけると思われたが,ヒッグスは出現しなかった。現在,テバトロンを上回る規模のCERNの巨大加速器LHCが稼働,着実にデータを蓄積している。ヒッグス探索のミッションはテバトロンからLHCへとバトンタッチされることになる。