ヒッグス発見の瞬間

M. リオーダン(科学史家・作家)
G. トネッリ(伊ピサ大学)
S. L. ウー(ウィスコンシン大学マディソン校)
201211

日経サイエンス 2012年11月号

8ページ
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 7月4日,スイス・ジュネーブ近郊の欧州合同原子核研究機構(CERN)で,万物に質量を与えるヒッグス粒子とみられる新粒子の発見が発表された。この世紀の発見のドラマは約半月前に始まっていた。CERNが擁する世界最強の加速器LHCは春以降,膨大な量の実験データを生み出していたが,6月14日,全データの封印が解かれ,多くの若手科学者が徹夜で解析に取り組んだ。翌6月15日の暑い午後,結果報告を聞こうと数百人の実験メンバーで部屋はいっぱいになり,多くは立ったままか,床に座り込んだ。ほとんどは前夜ろくに眠っていない。緊張と興奮が部屋を満たした。その発表の終わり頃,満員の聴衆が歓声を上げる瞬間が訪れた。