試験管で網膜をつくる

笹井芳樹(理化学研究所)
201302

日経サイエンス 2013年2月号

6ページ
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 生物の器官の中でも複雑さ精緻さで際立っているのが眼,とりわけ網膜だ。デジタルカメラのCCDチップをはるかに凌ぐ精妙な構造がどのように形成されるのか,長年の研究でメカニズムが徐々にわかってきた。特に,網膜形成の初期段階で,近くの組織からの外圧が必要かどうかは1世紀にわたる疑問だったが,その謎が解けた。著者の研究チームがマウスとヒトの幹細胞から,立体的な網膜の構造をつくり出すことに成功したからだ。細胞が凝集した塊は,著者らの目前で,文字通り「目の玉が飛び出す」ような驚くべき変容を遂げた。眼の発生原理の理解が深まるだけでなく,眼の難病の治療につながる成果だ。その研究のエッセンスを紹介する。