チャウシェスクの子どもたち
育児環境と発達障害

C. A. ネルソン(ハーバード大学)
N. A. フォックス(メリーランド大学カレッジパーク校)
C. H. ジーナ(テュレーン大学)
201308

日経サイエンス 2013年8月号

6ページ
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 孤児院の養育環境は愛情に欠けている例が多いとされ,施設養育が実の親や里親による世話に遠く及ばないことを示す調査研究が1960年代からいくつかあった。しかし,そもそも里子に選ばれた子供は問題が少なく,問題の多い子が施設に残されたのかもしれない。こうしたバイアスを除外して調べるには,遺棄児童を施設と里親家庭に無作為に振り分ける必要がある。そんな実験的研究は不可能に思えたが,ある特殊な事情がそれを可能にした。独裁者チャウシェスクの誤った人口増加政策によって生まれたルーマニアの孤児たちだ。前例のない厳密な比較対照研究から,施設養育が子供たちに強いた犠牲と,そうした傷を癒す道が明らかになった。