実在の本質
場の量子論は何を語るか

M.クールマン(独ビーレフェルト大学)
201402

日経サイエンス 2014年2月号

10ページ
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この物理世界を形作る,最も基本的な要素は何なのか。ヒッグス粒子の発見で完成したとされる「標準模型」によれば,それは一群の素粒子と,その間の相互作用を媒介する力の場だ。だがその「粒子」や「場」は無理の多い概念で,我々が普通にイメージする「粒子」や「場」からはほど遠い。粒子の場所は定まらないし,人によって見え方も個数も変化する。場はそれだけでは何の情報ももたらさず,実体を思い描くことすら容易でない。
 もっとわかりやすく,納得できる構成要素はないのだろうか? 哲学者たちは物ではなく,むしろ「性質」や物どうしの「関係」といった手に触れないものこそが,世界の基本なのではないかと考え始めた。