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「本当に効くのか」「果たして必要なのか」
とかく疑問を持たれやすいワクチンのイメージを変える
まったく新しい経鼻ワクチンの開発を進める
「毎年のべ5000万人がインフルエンザワクチンを受けているが,インフルエンザは毎年流行する。それが現実です」。国立感染症研究所の長谷川秀樹はこう言った。ワクチンといえば病気を予防するもの,というのが一般のイメージだが,今のインフルエンザワクチンには実のところ,感染予防の効果はない。あくまでかかかった時に重症化するのを防ぐのが目的だ。だがそれでは不十分だとの強い思いが,長谷川にはある。(文中敬称略)
インフルエンザは身近な病気だ。昨シーズンは推定1370万人が受診した。だが数日にわたって高熱や筋肉痛が続き,本人の辛さはもちろん,社会的な損失も大きい。高齢者はしばしば肺炎を,子供はまれに脳炎を起こし,毎年,全患者の0.05 〜 0.10%が死亡する。
2009年には,かつて人類が経験したことのないウイルスによるパンデミックが起きた。それまでパンデミックになりかねないと強く懸念されていたのは高病原性鳥インフルエンザH5N1だったが,実際に起きたのはブタインフルエンザH1N1だった。死者は少なかったが,次に来るパンデミックのウイルスを予測する難しさを改めて印象づけた。
もし感染そのものを防ぐワクチンができたら,そして様々なウイルスに幅広く対応できたら,インフルエンザ対策は根本から変わるはずだ。長谷川はこれまで一貫して,そんな新たなワクチンの研究に取り組んできた。そのワクチンが今,実用化に向けて臨床研究の段階に入っている。