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第41回 「作用素環」の密林を切り開く:小澤登高

内村直之(科学ジャーナリスト)
201408

日経サイエンス 2014年8月号

4ページ
( 1.5MB )
コンテンツ価格: 509

アロハシャツの数学者は,小気味よい切れ味で
幾何・代数・解析すべての要素を含む「作用素環論」の
もつれた世界に新たな見通しをもたらし,世界に注目されている

 2000年2月,パリ第六大学に来たばかりの小澤登高は,年初めからずっと持ち歩いていた1編の論文を改めて読んでいた。ふっと,その著者たちがとても重要な事実を見落としていることに気づいた。「どうしてだれも今まで気づかなかったんだ?」小澤は不思議だった。一晩寝た後にまた論文を読んだ。落ち着いたアタマで考えると,それは大変なことだった。(文中敬称略)
「著者たちの主張よりずっといいことが証明できるとわかったんです。そのとき私が頑張って何かしたとかそういうことではなかった。証明に必要な技術は,テキサスA&M大学時代にキルヒバーグ(Eberhard Kirchberg)の論文で学んでいた。あんな書き方の難しい論文はだれも読んでいなかったので,そんな技術はだれも知らなかっただけなんです」と小澤は振り返る。