バクテリア社会の弱点を突く

C. ジンマー(サイエンスライター)
201506

日経サイエンス 2015年6月号

6ページ
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 抗菌薬の効かない病原菌が増えて院内感染などが深刻な問題になっている。薬剤耐性が進化するのは,抗菌薬に強い変異株がもともと少数いて,耐性のない菌が死滅した好条件のなかでそれが急激に増えるためだ。これは進化の理にかなっているので,新たな抗菌薬を開発してもいたちごっこになる。そこで,「社会微生物学」という新分野の研究から,耐性の進化を回避する新しいアプローチが提案された。細菌が集団全体で共用している物質を阻害し,細菌どうしの協力やコミュニケーションを妨げる方法だ。進化論的に考えると,そうした阻害薬に対する耐性は出現しにくい。細菌との闘いで敵役だった進化が味方になるはずだ。