姿現す肥満遺伝子

R. J. ジョンソン(コロラド大学)
P. アンドリュース(ロンドン自然史博物館)
201602

日経サイエンス 2016年2月号

7ページ
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肥満は健康上の大問題だが,その要因の1つとして,脂肪を貯めやすくする肥満遺伝子が注目されている。尿酸を分解する酵素ウリカーゼに遺伝子変異が生じると,果糖を脂肪に変換しやすくなる。ウリカーゼ遺伝子の変異は,ヒトと現生大型類人猿の共通祖先だった類人猿に生じたもので,寒冷化による食物不足に苦しんだ時代,少ない食物を効率的にエネルギーに変える変異は生存に有利に働いたと考えらる(そのため肥満遺伝子は倹約遺伝子ともよばれる)。人類史を振り返れば,より深刻なのは肥満ではなく飢餓だったわけだが,不活性化したウリカーゼ遺伝子は,飽食の現代人にとって糖尿病や心疾患のリスクを高めるありがたくない存在だ。