特集:生物のGPS
空間認識のカギ握る グリッド細胞

M.-B. モーザー
E. I. モーザー(ともにノルウェー科学技術大学)
201606

日経サイエンス 2016年6月号

9ページ
( 2.5MB )
コンテンツ価格: 611円 (10%税込)

周囲の目印に対する自分の現在位置を把握する能力は重要だ。それがなければ,個人の生存はおろか,人類の生存も危うくなる。脳の深部にある神経細胞ネットワークが協力して,周辺環境を表す「脳内空間地図」を作製している。ある場所に来たときに発火する「グリッド細胞」や「場所細胞」,特定の方向を向いたときに発火する「頭方位細胞」,壁や囲いの縁など何らかの境界に接近すると発火する「境界細胞」,移動の速さに反応する「スピード細胞」などだ。これらの神経細胞はGPSさながらの働きをしている。ルート探索に関与している脳領域は,新しい記憶の形成とも密接に関連している。