特別リポート 未来の医療: 難病と戦う細菌ロボット

M. ウォルドホルツ(ジャーナリスト)
201707

日経サイエンス 2017年7月号

8ページ
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 遺伝子の異常のため,ある酵素ができずに高タンパク質食品に含まれる窒素をうまく代謝できない「尿素サイクル異常症」という病気がある。通常なら尿素として排出される窒素がアンモニアとなって血液中に蓄積し,重い症状を引き起こす。そこで大量のアンモニアを取り込むように改造した大腸菌を投与してこれを治療する試験が米国で近く始まる。大腸菌のDNAを改変し,人間の腸内環境を検知してアンモニアを取り込むようにした。細菌が治療用のロボットになるわけだ。特定の状況でスイッチがオン・オフする遺伝子回路によって微生物を診断・治療装置に変える合成生物学の手法は,遺伝病やがんの治療などに大きな可能性を秘めている。