免疫の「ブレーキ」解除でがんをたたく(再録)

J. D. ウォルコック(スローン・ケタリング記念がんセンター)
201812

日経サイエンス 2018年12月号

8ページ
( 2.5MB )
コンテンツ価格: 611

 抗がん剤や放射線治療が腫瘍を直接攻撃するのに対し,免疫療法は身体自身の防御機能を引き出して悪性腫瘍と闘わせる。従来の免疫療法のほとんどは,免疫細胞の力を増強してがんを攻撃しようとしていた。アクセルを踏んで車を加速するようなやり方だが,残念ながら効果は限定的で,がん治療の主流にはなり得ないと見られていた。

 だが1990年代に入ると,当時カリフォルニア大学バークレー校にいたアリソン(James P. Allison)氏らが,体の免疫応答の暴走を抑えるCTLA-4を一時的に無効にすれば免疫ががん細胞を攻撃でき,腫瘍が縮小するのではないかと予想。マウスの実験で狙い通りの効果を上げ,「免疫療法はたいして効かない」という見方を覆した。2011年,米FDAは,CTLA-4を抑える抗体を使った新たな抗がん剤イピリムマブを承認。またこれとは独立に京都大学の本庶佑氏らが研究していたPD-1も違う機構で免疫にブレーキをかけていることがわかり,その抗体を使った抗がん剤「ニボルマブ」は2014年に承認を取得した。