特集:睡眠とは何か
実験で明かす睡眠と記憶

K. A. パラー(ノースウェスタン大学)
D. ウディエット(仏国立保健医学研究機構)
201906

日経サイエンス 2019年6月号

7ページ
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 睡眠学習はかつて米国でブームになったが,1950年代に睡眠中に聞いたことは記憶されないことがわかると,期待は急速にしぼんだ。だが最近の神経科学の研究から,学習の重要な部分が睡眠中に起こることが示された。目覚めている間の新たに得た記憶は,夜間に脳内で蘇る。この再生プロセスによって,記憶したことの少なくとも一部が,長く脳内に残っていく。

 睡眠中に日中の記憶に関連した音や匂いなどの刺激を与えると,記憶が増強できることが実験から明らかになった。マウスに架空の記憶を移植する初歩的な動物実験も行われている。眠っている間に特定の場所の記憶と報酬系を関連づけると,目覚めてからのマウスの行動が変わる。

 眠っている間に英語を聞いても,話せるようにはならない。だが人が深い眠りの中にあるときに記憶を強化したり,それ以上の操作をすることは,どうやら可能であるようだ。それは新しい形の「睡眠学習」となるかもしれない。