特集:洪水災害を予測する
避難を促す情報提供

久保田啓介(日本経済新聞)
202010

日経サイエンス 2020年10月号

4ページ
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 「ここにいてはダメです」。東京都江戸川区が大規模水害に備えて2019年5月に公表したハザードマップは,表紙でこう明言している。33ページの冊子には高潮や洪水による浸水範囲を予想した地図に加え,随所に「域外への全員避難」を促すメッセージが書かれ,これほど強い調子で避難を求めるハザードマップは異例だ。

 背景には,ハザードマップをただ公表しても,いざというときに必ずしも避難に結びつかないという実情がある。リスクを過小評価し「わが身には起きない」と考える「正常性バイアス」が働くためだ。被災地の3県11市町のうち洪水の恐れのある低地の住民に聞いた調査でも,「(自分の地域は)安全」「まあ安全」と考えていた人が7割に達した。

 予報だけでは,人はなかなか動くことができない。迅速な避難を後押しするには,どうしたらよいのか。地域と専門家が協力した取り組みを紹介する。