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2018年にメキシコシティの30?40代の住民にアルツハイマー病に特有の脳病変が発見され,通常この病気の兆候が見つかる年齢より数十年早いことから,同氏の大気汚染との関係が指摘された。
メキシコシティだけではない。ハーバード大学の研究チームは,米北東部の50都市に住む65歳以上のメディケア受給者1000万人を対象にした大規模調査で,特定の大気汚染物質への暴露と神経変性疾患との間に相関があったと報告した。2018年にBMJ誌に発表された研究では,50?79歳のロンドン都市圏に住む13万1000人を調べ,微小微粒子状物質PM2.5への暴露レベルとアルツハイマー病のリスクとの間に相関があると結論した。
南カリフォルニア大学の医師で疫学者のチェン(Jiu-Chiuan Chen)は,個々の物質の影響については議論があるものの,その混合物による全体的な影響と脳の損傷や認知機能の低下には明確な関連があると指摘する。「高齢期における大気汚染への暴露と認知機能の関連を示す研究は10以上ある。若年期の大気汚染への暴露が危険因子になるかどうかはわかっていないが,動物実験では微粒子がアミロイドの蓄積を加速させた可能性が示されている」。