特別解説:COVID-19 危うい後遺症
体内で何が起きているのか

出村政彬(編集部)
202106

日経サイエンス 2021年6月号

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 4月10日,国内における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染者は50万人に達した。感染者の約8割は軽症で済むとされるが,回復後も倦怠感や嗅覚・味覚障害,息苦しさといった症状に悩まされる人は少なくない。

 2020年末から,慶應義塾大学の研究チームが全国規模の後遺症実態調査を実施している。北海道から九州まで約30の医療機関で,COVID-19の入院患者1000人の協力を得て退院後の体調変化を追跡する調査だ。4月中旬現在で約250人のデータが集まっており,データ収集と同時進行で解析を進めている。現時点の解析からは,入院時にCOVID-19の症状が1つ以上見られた人のうち,約半数で半年後も症状が残っていることがわかってきた。研究チームは今後,ある程度解析が進んだ時点で中間報告を行う予定だ。

 適切な診療には症状の理解が欠かせない。しかし,COVID-19の後遺症はどの症状もメカニズム解明の途上にある。COVID-19の代表的な症状である嗅覚障害もその1つだ。COVID-19には一過性ですぐに治るものと,長期にわたって嗅覚が回復しないものがある。におい情報を受け取る「嗅細胞」とその周辺で異変が起きていると考えられているが,まだ確定には至っていない。本来とは異なるにおいを感じる症状も報告されており,こちらはにおいを知覚する脳の仕組みと深い関係があるようだ。

 また,COVID-19では倦怠感や頭がぼうっとする「ブレインフォグ」が数多く報告されている。こうした症状は,ウイルス感染後に極度の疲労感などが続く筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)に該当する例が少なくない。ME/CFSは症状の重い時と軽い時が繰り返し訪れ,体のだるさや認知機能の低下を本人しか感じられないのがつらい点だ。周囲から「気のせい」と見なされ,理解を得られないケースもある。しかし,近年の研究から,こうした症状が決して気のせいではなく,れっきとした体内の異常によって引き起こされていることが明らかになりつつある。

 COVID-19は誰もが感染しうる病気だ。感染者や死者の数を抑える従来の対策に加え,後遺症を持つ人が十分なケアを受けられる体制を整えることの重要性が高まっている。