12ページ
( 9.4MB )
コンテンツ価格: 713円 (10%税込)
私たちが数多く抱えている地球規模の大問題を思い起こしてほしい。気候変動をうまく管理すること。食料生産を維持すること。世界の人々の健康状態を改善すること。これらの問題の多くは互いに重なる部分があり,解決策も相互に連結したものになってくるだろう。国連が持続可能な開発目標(SDGs)の17番目として「パートナーシップ」を挙げたのはもっともだ。
本誌SCIENTIFIC AMERICANと世界経済フォーラム(WEF)は毎年「エマージングテクノロジー トップ10」を選定し,特集としてお届けしてきた。10回目となる今年は,この「相互連結」が重要な特徴として前面に出た。
政府と産業界が脱炭素化の取り組みを加速させるなか,低排出の輸送や住居・商業インフラ,工業プロセスなど,多くの新たなアプローチが登場してくるだろう。そうした技術のうち,“グリーン”アンモニアの製造と,自分自身で肥料を作り出す改変作物の2つは,農業の持続可能性を高めるだろう。都市部から遠く離れた地方では,地元の土を材料に用いた3D印刷によって,より堅固な住宅を少ないエネルギーで建築できるだろう。
健康は万人の関心事だ。今年の「トップ10」には,新型コロナウイルス感染症COVID-19その他の病気を検出できる呼気センサーと,慢性疾患を容易に診断・管理できる無線バイオマーカー監視装置が入選した。ゲノム科学分野の新たな知見は人々の“健康寿命”を延ばし,医薬品のオンデマンド製造は患者個人に合った薬を提供することを可能にするとともに,大量生産を前提にした現在の供給問題を解決するのに役立つだろう。
こうした状況すべてを把握して追跡するため,インターネット・オブ・シングス(IoT,モノのインターネット)として接続された機器の数は急増している。これらの機器は軌道上を周回する超小型衛星を介してさらに全世界的に接続されるようになり,また無線信号から回収されたエネルギーによって作動するようになるだろう。未来がこれほど相互連結した姿に見えたことは,かつてない。