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生命活動を支えるタンパク質は正しい形をしていないと正常に働かない
異常なタンパク質を修復・分解する小胞体の重要な機能を解明した
脳や肝臓など様々な病気に関わる成果で,世界の研究を牽引している
京都大学大学院理学研究科教授の森和俊は細胞内に備わったタンパク質の品質管理の基本的な仕組みを解明した。生命活動を支えるタンパク質は正しい形をしていないと正常に機能しない。異常なタンパク質を直したり分解処理したりする仕組みが体にあることを明らかにした。(文中敬称略)
細胞内で合成される多種多様なタンパク質はいずれもアミノ酸がつながったヒモ状の分子が折りたたまり,3次元の形をとる。折りたたみは「小胞体」と呼ばれる細胞内小器官で起きる。正しい形に折りたたまれないと,タンパク質は本来の機能を果たせず,様々な病気や障害をもたらす恐れがある。
かつて折りたたみは自然に正確に行われると考えられていた時期があった。しかし1980年代になって事は単純でないことがわかってきた。正しく折りたたまれない異常な形のタンパク質が生じた際に,これを修正し,直せないなら廃棄する「タンパク質の品質管理システム」が細胞に備わっていることがわかってきたのだ。これを「小胞体ストレス応答」と呼ぶ。森は米テキサス大学で博士研究員(ポスドク)として働いていた時,酵母の小胞体で異常タンパク質の蓄積を検知して品質管理システムを起動しているタンパク質を見いだした。