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新型コロナウイルスの変異株オミクロンは,人類史上で最も急速に広まったウイルスだろう。突出した感染力で知られる麻疹ウイルスの場合,1人の感染者から12日間で15人に広がる。だが,去る冬に爆発的に広がったオミクロン株は人から人へさらに急速にうつり,1人の患者から4日間で6人,8日間で36人,12日後には216人の患者が生じうる。2月末には米国における新たな感染例のほぼすべてが,この変異株によるものとなった。
2020年秋に最初の変異株アルファが特定された当時,これが持つ少数の変異がウイルスの挙動にどう影響するかはほとんどわかっていなかった。だが,その後の1年間に得られた知識とデータによって,オミクロン株に生じた約50カ所の変異の一部と,急速で効率的な拡散をもたらす仕組みを関連づけられるようになっている。
通常ならこの究明作業にはもっと長い時間がかかるところだが,「それまで複数の変異株を1年間にわたって調べてきた土台があったので,解明の準備ができていた」と加ブリティッシュコロンビア大学の生化学者スブラマニアム(Sriram Subramaniam)はいう。
オミクロン株の変異の数は他の「懸念される変異株」の2倍に上り,亜型のBA.2系統ではさらに増えているとみられる。オミクロン株のスパイクタンパク質に生じた変異のうち13は,他の変異株にはほとんど見られないものだ。これらの構造に生じた変化は,このウイルスに驚くべき新たな能力をいくつか付与した。以前のデルタ株を力ずくの“超人ハルク型”とすれば,オミクロン株は覆面をかぶって超スピードで動く邪悪な“フラッシュ型”だといえる。
この記事では,オミクロン株で変化した4つの特徴を示す。うち3つの変化は免疫系をかわし感染力を強めるのに寄与しているが,4番目は症状が比較的軽くすむことにつながっている。